内分泌代謝/糖尿病内科
ホルモンの異常に伴う病気を扱っています。ホルモンは私たちの体で作られて血流に乗って運ばれ、必要な場所で働き、からだの調子を一定に保つ微量な物質です。インスリンは膵臓から分泌されて血糖を下げるホルモンですが、インスリンの分泌が低下すると糖尿病が起こります。女性ホルモンが欠乏すると更年期障害、骨粗鬆症、そして動脈硬化症がおこります。
一方、肥満により蓄積された内蔵脂肪は、脂肪細胞からホルモンを分泌し、糖や脂肪の代謝、食行動に影響します。メタボリックシンドロームでは、内臓脂肪の蓄積のために、脂肪細胞から分泌されるホルモンの異常が血圧の上昇や糖尿病などをひきおこします。
その他内分泌の病気として、甲状腺、副甲状腺、副腎、脳の視床下部や下垂体などの病気があります。
甲状腺の病気
どんな病気があるの?
甲状腺の病気としては、バセドウ病、慢性甲状腺炎(橋本病)、亜急性甲状腺炎、プランマー病(自立性機能性腺腫)、無痛性甲状腺炎、結節性甲状腺種(腺腫様甲状腺腫)、びまん性甲状腺腫、甲状腺悪性腫瘍(乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫)などがあります。この中で特に頻度の多い病気は、バセドウ病(日本人女性の200人に1人)と、慢性甲状腺炎(40歳以降の女性の13人に1人)です。
どうやって診断するの
甲状腺の病気は医師による診察(触診など)、血液検査、超音波検査などを行い、必要な場合は甲状腺の穿刺吸引細胞診検査などにより診断されます。
どんな症状がでるの?
自覚症状は大きく分けて,甲状腺ホルモンが過剰に分泌される時の症状と甲状腺ホルモンが不足したときの症状に分けられ、それぞれ特徴がありますが、
いずれにも該当せず無症状の場合もあります。
甲状腺ホルモンが過剰な場合(甲状腺機能亢進症)の症状
- 暑がりで汗かきになった
- 落ち着きがなくイライラする
- 動悸がする、脈が速い
- 食欲はあるのに体重が減る
- 手指の震えがある
- 眼球がとび出てきたような気がする
- 甲状腺全体がはれている(前頸部、のど仏の下)
- 注意散漫、記憶力低下
- 過少月経また無月経
甲状腺ホルモンが不足(甲状腺機能低下)の症状
- 寒がりになった
- 何となく無気力でやる気が出ない
- のどがつまる感じがする
- 甲状腺が全体的にはれている
- 便秘しやすくなった
- 手足がむくみっぽい
- 食欲がないが体重が増えた
- 髪の毛や眉が薄くなった、皮膚がかさかさする
糖尿病とは
日本では100人に7人が糖尿病といわれています。また、糖尿病の「予備群」と呼ばれる人は、1,320万人とされ、今や糖尿病はわが国の国民病となっています。
ホルモンの一種であるインスリンの作用不足によって高血糖状態が持続する代謝疾患(症候群)が糖尿病です。インスリンは血糖値を下げるホルモンで、1921年にトロント大学の2人の学者により発見されました。このインスリンは、膵臓のβ細胞で作られていて、常に少量が血液中に分泌されています(基礎分泌)。そして食事をとると、血糖値の上昇にともない分泌量が増加します(追加分泌)。このインスリンが肝臓や筋肉に作用して血糖値を低下させる仕組みになっています。この仕組みに異常が生じると糖尿病が発症します。
1型糖尿病と2型糖尿病
糖尿病には、1型糖尿病とよばれる膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンの絶対量が不足して血糖値が高くなるタイプと、2型糖尿病とよばれる遺伝的な因子に不適切な生活習慣(高脂肪食、過度の飲酒、運動不足、ストレスなど)が加わって、インスリンの相対的不足や肝臓や筋肉でのインスリンの作用不足により高血糖を来すタイプがあります。
1型糖尿病では絶対的に不足したインスリンを補う必要があり、インスリンの注射が行われます。
2型糖尿病では、運動不足や食生活などの生活習慣の見直しをまず行い、次に必要に応じて薬物療法などが行われます。
適切な治療をせず放置した場合には、高血糖の状態が長く続くことにより、血管が傷つけられ、さまざまな合併症があらわれます。 しかし、糖尿病の初期にはほとんど自覚症状がなく、重症化して気づいたときには、すでに合併症が進行している事も少なくありません。
検査
糖尿病の診断は、血液検査により行われます。尿検査での尿糖は必ずしも陽性になるとは限りません。また仮に尿糖が陽性であっても、それだけでは糖尿病の診断は確定しません。正確には、血液検査で空腹時血糖値が126mg/dL以上、または随時血糖が200mg/dL以上,または経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)の2時間値が200mg/dL以上のいずれかで、HbA1cの国際標準値(NGSP)が6.5%以上の人は糖尿病と診断されます。
糖尿病の合併症
糖尿病の合併症としては
- )糖尿病性網膜症(糖尿病による目の病気で、失明する恐れがあります)
- )糖尿病性腎症(慢性腎臓病となり人工透析が必要になる事もあります)
- )糖尿病性神経障害(しびれ、感覚の麻痺、痛み、胃腸障害、立ちくらみなど)
- )虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など生命を脅かす危険性が高い病気です)
- )脳梗塞(ラクナ梗塞とよばれる小さな梗塞が多発する場合があります)
- )閉塞性動脈硬化症(糖尿病性足壊疽などで足の切断になる恐れもあります)
などがあります。
糖尿病に合併した慢性腎臓病で人工透析に導入される方は年間16,000人、糖尿病のために足の切断を余儀なくされる方が年間3,000人おられます。また糖尿病性網膜症で失明される方は、後天性の失明の原因の第2位となっています。そして糖尿病の方の平均余命は、男性68歳、女性71.6歳で、日本人の平均余命(男性77.6歳、女性84.6歳)より男性で10年弱、女性では13年短くなることがわかっています。糖尿病はできるだけ早期に発見し、速やかに適切な治療を開始する事が大切です。
糖尿病の治療
糖尿病の治療は食事療法、運動療法、薬物療法の3つが基本となります。そして治療の最終目標は、糖尿病がない人とかわらない寿命とQOL(生活の質)を得ることです。
脂質異常症(高脂質血症)とは
血液中にはコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4種類の脂質がとけこんでいます。この中で特にコレステロールと中性脂肪が大切です。
コレステロールには善玉と悪玉があります。血液中のLDL(悪玉)コレステロールが多過ぎると、動脈の壁の中に入り込んでプラークという固まりができ、動脈の壁が厚く硬くなり、血管の内側は狭くなります。反対にHDL(善玉)コレステロールは、血管内の余分なコレステロールを回収し、血管内をきれいにして動脈硬化を防ぐ働きがあります。また中性脂肪が多いと、HDL(善玉)コレステロールが減り、LDLコレステロールが増えやすくなります。日本人の死因の第2位と3位を占めているのは、狭心症や心筋梗塞などを含めた心臓病と、脳出血や脳梗塞などの脳卒中ですが、これらは動脈硬化が原因となって起こる血管の病気です。
脂質異常症(高脂質血症)による動脈硬化
動脈硬化は、心臓からからだの各部分へ血液を運ぶ動脈が硬くなるもので、動脈の内側の壁にコレステロールがたまって血管が盛りあがって狭くなり、それとともに血管が硬くもろくなります。そのため、血液が流れにくくなり、血管に血液の固まりがつまりやすくなるのです。
さらに動脈硬化は高血圧を悪化させる要因でもあり、また慢性腎臓病の原因ともなります。
検査
脂質異常症を診断するには血液検査が必要です。空腹時(12時間の絶食後)に血液検査をして,血液中の悪玉コレステロール(LDL-C)が140mg/dL以上、善玉コレステロール(HDL-C)が40mg/dL以下、中性脂肪が150mg/dL以上のいずれかに該当する場合に脂質異常症と診断されます。脂質異常症は、たとえ自覚症状はまったくなくても、早く見つけて治療することが大変重要です。